固定資産の修理や改良等の為に支出した工事代金やリフォーム費用などの金額は原則として修繕費として損金算入することが認められておる。
しかし、国税庁の見解では実際に行われた修理や改良等が固定資産の使用可能期間を延長させる工事である場合や価値を増加させる工事に該当する場合は、資本的支出として扱うように通達を行なっておる。
固定資産の修理や改良等の為に支出した費用は基本的には修繕費であるが、条件によっては資本的支出にもなりうる。
では、この判定はどのように判断していけば良いのじゃろうか?
ここがポイントになるのが、国税庁の告示しておる以下の記述じゃ。
修繕費になるかどうかの判定は修繕費、改良費などの名目によって判断するのではなくその実質によって判定する
さすが国税庁とも言うべきか、この文章を見る限り判断が難しくどちらともとれなくもない記述となっておる事がわかるのぉ。
尚、国税庁は修繕費として認められないケースを幾つかの事例を交えて段階的な形式基準で解説しておる。
この形式基準を解りやすくまとめたのが以下の修繕費と資本的支出判定フローチャートじゃ。
ここから解説する判定フローチャートは「YES」「NO」方式で上から順に進んでいき、項目に該当する場合に修繕費か資本的支出かを判定する事ができるようになっておる。
実際にアパートの一室が空室になった場合に簡易的なリフォームを検討したり、ややおおがかりな壁の補修を行う際の補修工事を検討する場合などに以下のフローチャートと合わせて判定してみると良いじゃろう。
顧問税理士や顧問会計士がついている場合は、このようなリフォーム工事などをフローチャートを用いて判定する必要がないのかもしれん。
しかし、アパート物件の所有者や投資用の一棟マンションを保有しておる大家さんであれば、物件の維持にかかる維持費や修繕費が想像以上に大きな金額となることをご存じじゃろう。
また、収益不動産を母体とする大家さんビジネスでは、何かトラブルが発生した際に直ぐに動かすことのできる一定量の現金がないと運営が難しい事も経験済みのはずじゃ。
不動産に強い顧問会計士や税理士であれば、少しでも有利に働く方式で工事を行うように事前に説明があるのかもしれん。
しかし経験が浅い場合や未熟な税理士であれば、工事金額が大きくなると本来修繕費である支出でも資本的支出として扱ってしまっているようなケースもあるじゃろう。
最終的な判断は国税庁が述べている「実質によって判定」という事になる。
しかし、全てを税理士に任せっきりにせずに個人でもフローチャートを元に工事の種類を検討していくような学習を積んでいくことも大切なのじゃよ。
では次項からは判定フローチャートを元に具体的なリフォーム事例を見ながら修繕費と資本的支出の判定を行なっていくとしよう。