築17年の中規模一棟マンションを購入したが、建物屋上部分のトップコート塗装に剥離が生じており、更に部分的に小さなクラックが入っているのを確認。
まだ雨漏りなどの被害が生じていないが今後の更なる経年劣化が心配。
そこで付き合いのある防水業者に見積もりをとってもらい屋上防水工事一式を依頼することにした。
この屋上防水工事にかかる工事費用の総額は120万円である。
一棟マンションや一棟ビルを所有している場合は、屋上部分が陸屋根式構造となっている為、定期的に屋上防水工事を行う必要が出て来る。
屋上は外壁と同じく常に風雨にさらされている部分でもあり、経年劣化も進みやすい部位のひとつじゃ。
尚、今回の事例のように大掛かりな塗装工事や防水工事を行った場合は、屋上防水工事の技術力も性能も毎年のように向上している事から、原状回復という概念を超えて建物の性能、耐久性が向上する資本的支出として判定すべきではないだろうか?という点が判定のポイントとなるじゃろう。
屋上防水工事は修繕費として必要経費扱いとなるなのか?それとも資本的支出として資産計上し減価償却資産とすべきなのか?
ここでも判定フローチャートで確認していくとしよう。
まず支出金額は20万円未満ではないので(NO)。
周期は屋上防水工事の耐用年数が概ね10年〜15年程度。
尚、屋上防水工事の耐用年数の目安は以下の通りじゃ。
【屋上防水工事の耐用年数の目安】 | |||
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防水工事の種類 | 耐用年数 | ||
押さえ防水層 | 17年 | ||
アスファルト防水 | 13年 | ||
合成高分子系シート防水 | 13年 | ||
ウレタン塗膜防水 | 10年 |
実際の耐用年数は環境によっても劣化スピードが異なる為、個々の不動産物件ごとに異なってくるじゃろう。
しかし、それでも屋上防水工事の定期工事の周期が3年以内とは言えず(NO)。
続いて明らかに価値を高める、もしくは耐久性を高める支出という点。
おそらくここで(YES)か(NO)かの判定に迷うことになるはずじゃ。
尚、この屋上防水工事にかかる工事費用は結論から述べると「修繕費」として仕分けする事が可能ということじゃ。(※税務署確認済み)
修繕費とみなす事が可能である最大の理由は、前項の修繕費とみなすリフォーム工事の項でも解説したAの建物を維持するために不可欠となる定期工事費に該当する為じゃ。
屋上防水工事はスパンは長いもののおおよそ平均で10年に一度は工事を必要とする定期的工事じゃ。
防水工事をしなければ建物の維持ができないという現実からもこの場合は次のフローチャートの明らかに修繕費に該当するの部分で(YES)と判定する事ができるという訳じゃ。
雨漏りは建築物のガンとも言われるように放置すればマンションやビルなど建物そのものの維持が難しくなる。
間取り変更などの工事とは異なり、定期的に工事することが必要不可欠であるという点が重要なポイントとなる。
今回の屋上防水工事のように比較的工事金額が大きくなる場合は、やはり判定が難しい部分があるのも事実じゃ。
尚、フローチャートを利用しても、どうしても判定に迷う場合は対象物件の登記簿謄本に記載されている管轄エリアの税務署に確認をとってみると良いじゃろう。