マンション・一戸建ての修繕費

マンション・一戸建て・アパートの形式基準(フローチャート)に基づく修繕費と資本的支出の判定目安、資産計上・経費処理について初心者向きにわかりやすく解説。

◆修繕費と資本的支出の形式基準の解説

◆防犯設備の新設をする場合の判定

 築30年の1ルーム26世帯の中規模賃貸マンションを経営しているが、空室率を改善させるために新たに設備投資を検討している。

 大家仲間に空室の改善を施すための対策について相談したところ、該当物件は築30年経過していることもあり防犯対策に不安があり、防犯設備を設置する事で印象が変化するのでは?とアドバイスを受けた。

 そこで、テレビモニター付きインターフォンの価格を調べてみたところ、取り付け工事費用まで全て込みの価格で1世帯あたり、37,000円で設備投資ができる事が解った。

 全世帯にテレビモニター付きインターフォンを設置した場合の合計金額は以下の通りである。

37,000円×26世帯=962,000円
設置費用込の合計金額⇒96万2千円

◆セキュリティー対策は不可欠になりつつある

 築年数がある程度経過している賃貸物件と新築の賃貸物件のひとつの特徴としてセキュリティー面の違いがあるのは間違いないじゃろう。

 近年の新築賃貸物件の多くは、「防犯シリンダー」と専用の「ディンプルキー」を新築時から導入しピッキング対策を行っている事も多く、中規模以上の賃貸物件であれば「防犯カメラ」を導入しておるケースも多くなってきておる。

 尚、費用対効果が高く、導入しやすい防犯グッズのひとつにテレビモニター付きインターフォンがあるが、例題のような築年数の古い物件の場合は一定の空室対策効果があると言われておる。

 但し、これらの新しい設備の導入は明らかに物件の価値を高める要素を持っている点把握しておくことが大切じゃ。

◆各居室ごとに判定するため26室すべてが修繕費となる

 今回の例題にあるテレビモニター付きインターフォン設備の設置は、修繕費として必要経費扱いとなるなのか?それとも資本的支出として資産計上し減価償却資産とすべきなのか?

 今回のケースでは素人目で見ても明らかに資産価値を高める投資費用である為、「資本的支出」と容易に判定できる。

 しかし、テレビモニター付きインターフォンは各住居ごとに設置する設備であり、個別で交換が可能な設備じゃ。

 この点については、前項の畳⇒フローリングへの交換の項でも解説しておるが、個別で交換可能な設備に関しては、総額で判定せずに各居室ごとに判定を行う事が可能となっておる。

 その為、各居室のテレビモニター付きインターフォンの費用37,000円はフローチャートの支出金額の20万円以下に該当し全額修繕費として扱う事になる訳じゃ。

各居室ごとにフローチャートで判定【画像】

 極端な例じゃが、仮に100世帯の集合住宅である場合でも、各居室ごとに交換が可能な設備を新設する場合は、全額が修繕費として計上できるという訳じゃな。

◆修繕費判定に対する正しい見解を持つことが大切

 不動産投資を事業として開始すると、開始後数年で税務調査が行われるケースがある。

 この税務調査は半数以上が事業を開始してから10年以内に行われるのじゃが、税務調査の際に「この支出は明らかに資本的支出では?」と問われるケースがある。

 税務調査は数日に渡って行われるが、担当はベテランから若手までおり、残念ながら全員が税務に熟知しておる訳ではない。

 要は、会計知識がまだ乏しい状態で税務調査に来ている担当者もいるという事じゃ。

 例題のように明らかに資産価値を向上する設備投資を行った場合は、設置費用全額で判定する為、資本的支出で計上しなさいと言われる可能性もある点を把握しておく事が大切じゃ。

 この際、個別の交換可能な設備であるという点を主張できなければ、税務署員の言いなりで仕訳処理を行う事になりかねない。

 本来修繕費として計上すべき設備までも資本的支出として数年にわったて経費処理を行う事にならないように、修繕費判定に対する正しい見解を持つことが大切なのじゃよ。