マンション・一戸建ての修繕費

マンション・一戸建て・アパートの形式基準(フローチャート)に基づく修繕費と資本的支出の判定目安、資産計上・経費処理について初心者向きにわかりやすく解説。

◆修繕費と資本的支出の形式基準の解説

◆20万以下と20万超の見積もりが含まれるリフォーム工事

 築24年の中規模の賃貸アパートを経営しているが、畳の部屋を全てフローリングにしようと考えている。

 畳からフローリングへのリフォーム工事は、賃貸人が入居中に工事を行う事が難しいため、賃貸人が出た時に順次工事を行っていく予定で数年かけての工事になることを計画している。

 この際、ちょうど退去の申し出が2件入った為、付き合いのあるリフォーム会社に両部屋の工事費用の見積りを依頼することにした。

 この畳からフローリングへのリフォーム工事にかかる工事費用は以下の通りである。

A室(2LDK)⇒24万円
B室(1LDK)⇒16万円
工事費用合計⇒40万円

◆1室単位での交換が可能な設備

 賃貸マンションや賃貸アパートなどの集合住宅の場合、全ての居室が同じ間取りであるとは限らない。

 その為、今回の例題のように同じ工事を行った場合であっても、各居室ごとに工事費用が異なるケースがあるのは当然の事じゃ。

 尚、例題のように、1室単位での交換が可能な設備に関しては各居室ごとの見積金額で資本的支出や修繕費かを判断する事が可能となっておる。

◆畳⇒フローリングへの交換は修繕費になるのか?

 畳からフローリングへの交換は、修繕費として判定する事が可能じゃろうか?

 フローチャートへ進む前に、今回のように物件そのものの性質、用途が変更となる工事の場合は物件の価値が上昇する工事と捉える事になる。

 その為、結論から言うと今回の工事は資本的支出として資産計上する事が正解じゃ。

 但し、今回の工事では工事費用総額が40万円となっておるが、この40万円全てが資本的支出となる訳ではない。

 これは1LDKのB室の工事費用は16万円となっており、フローチャートの支出金額が20万円以下に該当する為じゃ。

フローリング工事のフローチャート【画像】

 その為、まず1LDKの居室Bの支出金額は20万円未満となり(YES)で修繕費で確定。

 続いて2LDKの居室Aの支出金額は20万円未満ではないので(NO)。

 周期もフローリングの交換時期は居住者の使用状況によって大きく左右される要素があるのじゃが概ね10年程度は維持するとして考慮すると3年以内とも言えず(NO)。

 続いて明らかに価値を高める、もしくは耐久性を高める支出という点じゃが、畳からフローリングへの変更の場合は原状回復とは異なり資産価値の向上が見込める為(YES)として判定する事になるじゃろう。

◆20万円以下の工事は全て修繕費として計上

 和室の畳が古くなってきたため、新しい畳に交換するような場合は問題なく修繕費として計上できる。

 しかし、今回のように資産価値を高める要素があり、かつ耐久性の向上を図るような工事を行う場合は原則として全て資本的支出として計上しておくのが無難じゃろう。

 尚、今回の例題における仕訳は、

A室(2LDK)⇒24万円(資本的支出)
B室(1LDK)⇒16万円(修繕費)

 としてそれぞれの仕訳を行う事になる。

 明らかに資産価値を高めるような資本的支出に該当する費用であっても、集合住宅のように複数の居室がある場合は修繕費に該当する項目がないかチェックするようにしたいものじゃ。

 ポイントは、個別に交換が可能な付帯設備であり、かつ20万円以下の工事は全て修繕費として計上する事が可能であるという点。

 もちろん工事費用総額を資本的支出として計上しても文句を言われる事はないのじゃが、修繕費として見込める費用は正確に経費計上する事は不動産経営の基本なのじゃよ。